そりゃねえよ
親に負担を掛けたくなかった私が借りたのは、トイレと風呂が共同利用のボロアパート。 不動産屋さんに鍵と言って渡されたのは、初めて見るダイヤル錠。 私、「これが鍵ですか?」 不動産屋さん、「そうだよ。使ったことある?」 初めて見るため使ったこともないのですが、ダイヤル(数字)を回して操作することは見当が付いた。 ボロアパートは、1階が男性専用、2階が女性専用になっており、女性の部屋のドアには4ケタのダイヤル錠が付いているらしい。 男の私の部屋は3ケタのダイヤル錠、しかし、鍵を付けているのは私だけ。 引越し作業を終え風呂に入っていると、女性の声で「入って良い?」。 風呂とトイレは他の住人との共同利用と聞いてはいたが、混浴? 大学生になったばかりで童貞だった私は、風呂の中でパニくった。 女性、「開けるね」 浴室のドアが開くと 女性、「シャンプーを置いておくね」 私、「あ、ありがとうございます」 なーんだ、混浴ではないのか。 入る時には気付かなかったが、脱衣所には「覗きに注意」との張り紙がしてあった。 自分の部屋に戻り、3ケタのダイヤル錠を解除しようとしていると、先ほどの女性が隣の部屋から出て来た。 私、「先程はどうも」 女性、「学生さん?」 私、「はい」 女性、「困ったことがあったら言ってね」 私、「ありがとうございます」 このことをボロアパートの敷地内に住む大家さんに言うと、声を掛けてくれたのは女性ではなく女装をした男性だった。 ボロアパートの至るところに「ドロボー多発」と書かれた張り紙がしてあるため用心していたら、隣の部屋に住む女装をした男性が、私の部屋のダイヤル錠を解除しようとしていた。 このことも大家さんに話すと、「仕方がないわよ」と訳の分からないことを言われた。 ボロアパートの部屋は安いデジタル錠だが、大家さんの家の鍵は最新式の顔認証。