学習能力
認知機能が低下した父親が、家の鍵を良く失くすため、鍵屋さんに相談をすると、指紋認証で開けられるカギを勧められた。 指紋認証なら、カギは必要ない。 そのことを父親に話すと、 父親、「カギは何処に刺すんだ?」 私、「カギは刺さなくて良いの」 父親、「玄関は、どうやって開けるんだ?」 私、「そこをピッと触れば良いの、分かった?」 父親、「分かったけど、カギは?」 私、「お父さんの指でピッとすれば良いの」 外出していた父親が帰って来たため、指紋認証で玄関ドアを開かられるのか家の中から見ていると、父親は誇らしげに指紋認証を行った。 妻、「大丈夫のようね」 私、「そうだな」 翌日、タクシーが停まる音がしたため、外出していた父親が帰って来たと思いリビングで待っていると、チャイムが鳴った。 妻、「お義父さんじゃないのかしら?」 子供がインターホンの画面を見ると 子供、「おじいちゃんだ」 妻、「どうして入って来ないのだろう?」 再びチャイムが鳴ったため 私、「俺が見て来るよ」 私が玄関ドアを開けると 父親、「やっと開いた」 私、「チャイムを2回も鳴らしたけど、どうかしたの?」 父親、「今、チャイムを押したか?」 認知が進む父親は、指紋認証の玄関のカギとチャイムを間違えていた。 妻、「慣れるまでは仕方ないわよ」 私、「そうだな」 以降も、父親は指紋認証の玄関のドアとチャイムを間違えるため、宅配業者さんが荷物を持って来てくれても、父親が間違ってチャイムを鳴らしたと思い、出なかった。 父親、「なんで出ない」 私の代わりに父親が宅配業者さんから荷物を受け取ると、「ピンポーン」。 妻、「どうかしたのかしら?」 外を見ると、指紋認証の玄関ドアを開けるために、父親がチャイムのボタンを何度も押していた。