僕の母ちゃん

僕の母ちゃん

深夜2時過ぎ、〇〇から電話があった。 〇〇、「A子さんは、貴方のお母さんですか?」 私、「はい、A子は私の母です」 〇〇、「A子さん、家に帰れなくなったみたいなため、迎えに来てもらえますか?」 母親を迎えに行くのに5時間以上掛かったのは、母親が住む実家から私が住む家までは250キロほど離れているから。 私、「お世話を掛けました」 〇〇、「お母さん良かったね、息子さんが迎えに来てくれて」 母親(A子)、「何しに来たの?」 私と〇〇、「・・・」 私、「一緒に帰ろうか?」 母親、「一人で帰れるわよ」 〇〇を出た母親は、迷うこと無く家に帰ることが出来た。 母親、「あれっ?」 私、「どうかしたの?」 母親、「家のカギを知らない?」 私、「僕が知るわけないでしょ」 母親が〇〇のお世話になったのは、家のカギを探しに行ってしまったから。 母親、「オカシイわね。いつもは、ここに置いてあるのに」 私、「鍵屋さんに来てもらう?」 母親、「どうして?」 私、「カギがなければ家に入れないでしょ」 母親、「カギならスペアキーが家にあるわよ」 私、「どうやって家に入るの?」 母親、「カギで開けるに決まってるじゃない(笑)」 母親は認知が進んでいた。 鍵屋さんに来てもらい、玄関ドアを開けてもらったのだが、家の何処にもスペアキーは無かった。 鍵屋さんにカギを複製してもらい、母親とはカギを置く場所を決めた。 数日後、またしても〇〇から電話があり、母親を迎えに行った。 母親と決めた場所に、カギはない。 予備として作っておいたスペアキーは私が持っていたのだが、そのスペアキーを母親に渡すと、またしても、〇〇から電話があった。 賃貸物件なら、管理会社に鍵を預かってもらうことも可能かもしれないが、母親が住む実家は自己所有の一軒家。 町内会の人にスペアキーを預かってもらうことも考えたのだが、認知が進んだ母親は、町内会の人と上手く行ってないため、頼めない。 予備のスペアキーも失くしてしまったため、再度、同じ鍵屋さんに来てもらった。 私、「失くしたらダメだよ!」 母親、「ごめんよ」 私、「皆に迷惑を掛けてるんだからね」 母親、「ごめんよ」 謝る母親が小さく見え、悲しかった。 認知が進む母親との会話を聞いていたのか 鍵屋さん、「私なら何度でも来ますよ」 この言葉に、息子の私は涙が出たのだが、認知が進む母親は外の景色をボンヤリ見ていた。

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