裏ワザ?
高2の春、地元の先輩にバイクを譲ってもらった。 譲ってもらったと言っても、タダではなく、相場より高い値段で買わされた。 先輩、「このカギ1つで全部開くから」 私、「あざっす(ありがとうございますの略)」 先輩、「あまりスピードを出すなよ」 そう言われても、相場より高い値段で買わされた先輩のバイクは、メッチャ遅かった。 彼女、「もっとスピードを出してよ」 私、「ニケツ(二人乗り)だとスピードは出ないよ」 自転車と大差無いスピードしか出ないバイクだが、学校が休みの度に彼女と出掛けた。 彼女、「ねえ、寒い」 私、「ジャンパーを着る?」 彼女、「うん」 バイクを停めたのは、シートの下にジャンパーが収納してあるから。 シートを開けるには、鍵が必要。 バイクに刺さっていた鍵で、シートを開けた。 私、「どっちが良い?」 彼女、「これ着るの?」 私、「ダメ?」 彼女、「このジャンパー、ダサいよ」 私、「着ないの?寒いよ」 彼女、「着る」 彼女が選んだのは赤色のジャンパー。 私が白色のジャンパーを着ると 彼女、「やっぱり白色のジャンパーが良い」 彼女とジャンパーを取り替えた。 私、「ついでに御飯を食べて行かない?」 彼女、「この格好で行くの?」 私、「ダメ?」 彼女、「このジャンパー、ダサいから脱いでも良い?」 彼女とお揃いが良いため、私もジャンパーを脱いだ。 私、「・・・」 彼女、「どうかしたの?」 私、「シマッた」 彼女、「何をしたの?」 私、「鍵を入れたままシートを閉じちゃった」 彼女、「シートを開ければ良いじゃない」 私、「鍵が無いと開かないんだ」 彼女、「ていうことは、帰れないの?」 私、「・・・、うん」 彼女、「えー!?」 彼女、「鍵屋さんに来てもらったら?」 私、「鍵屋さんをどうやって調べるの?」 彼女、「スマホで調べ・・・、もしかして、スマホもシートの下にあるの?」 私、「うん」 彼女、「私のスマホも?」 私、「うん」 彼女、「何してんのよ!」 困っていると、バイクに乗った年配ライダーが声を掛けてくれた。 ライダー、「どうしたの?」 私、「カギを入れたままロックしちゃったんです」 ライダー、「オジさんもバイクに乗り始めた頃、良くやったよ」 鍵屋さんには、そのライダーが連絡してくれたのだが、鍵屋さんにとって春は繁忙期のため、来てくれるまでに3時間も待たされた。 鍵屋さん、「遅くなってごめんね。すぐ開けるから」 私は鍵屋さんが特殊な工具を使ってシートを開けると思ったのだが、鍵屋さんがしたのは〇〇〇。 すると、シートは簡単に開き、彼女と私は唖然。 鍵屋さん、「このバイク、僕も乗ってたことあるんだよ」 試しに私が〇〇〇をやってみると、シートは開かなかった。 数日後、バイクに保管しておいたサイフがなくなったのは、私にバイクを譲ってくれた先輩が盗んだから。 私、「先輩、サイフを返して下さいよ」 先輩、「カギもないのに、俺がどうやって盗むんだよ」 先輩の彼女さん、「返してあげたら」 先輩、「仕方がねえな」 先輩は、鍵屋さんがやったように、〇〇〇をしてシートを開けた。