過去の自分に踏ん切りをつける鍵交換

過去の自分に踏ん切りをつける鍵交換

友達、「マンションのカギは返してもらった?」 私、「ううん」 私がマンションを借りたのは、バンドマンの彼と同棲をしたため。 友達、「家賃は高いんでしょ?」 私、「うん」 彼がバンドの練習をするために、防音が整った部屋を借りたため、一般のワンルームマンションより家賃は高い。 友達、「コンパがあるから来なよ」 友達がコンパに誘ってくれるのは、バンドマンの彼がマンションを出て行ったから。 私、「辞めとく」 友達、「彼がマンションを出て1年も経つんでしょ?彼のことは、もう諦めなよ」 私、「・・・」 マンションを出ても、彼がバンド活動を続けていることは、バンドのホームページを見て知っている。 そのホームページには、バンドの日程が載っており、それによると、私が住んでいる町でライブが開催される。 彼が出るライブを見に行きたいのだが、一人で行く勇気はない。 友達を誘うと 友達、「ライブには何をしに行くの?」 友達がライブに付いて来てくれたのは、ライブに行く目的が彼との関係に踏ん切りをつけるためだから。 スポットライトを浴びる彼は、格好良かった。 私の思い込みかもしれないが、ライブの途中、彼と目が合った気がする。 ライブが終わると、他の客は興奮が収まらずハイテンションだったが、私は友達に励まされ泣いてしまった。 友達、「別に今日じゃなくても良いじゃない」 ライブのあった日、マンションの鍵を新しいものに替えた。 友達、「大丈夫?」 私、「うん」 友達、「踏ん切りをつけられそう?」 私、「どうだろう」 マンションの鍵を新しいものに替えても、彼への思いに踏ん切りをつけられなかったのは、ライブのあった深夜、マンションに彼が帰って来てくれたから。 彼、「どうして鍵を替えるんだよ!」 私、「ごめん。これ、新しいカギだから」 彼、「要らねえよ」 彼が新しいカギを受け取ってくれなかったのは、別のマンションに一緒に引っ越すことになったから。

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